INFO 2018.06.18 (月)
「売り手市場」とか「買い手市場」・・・じゃなくて
「売り手市場」とか「買い手市場」・・・じゃなくて
※写真と内容は全く関係ありません。
求人の数が多く求職者が仕事を選べる(労働力を売りやすい)状態を「売り手市場」といい、求職者の数が多く企業が人材を選べる(労働力を買いやすい)状態を「買い手市場」といいます。人に対して売り買いという表現が適切かどうかはさておき、労働力を売るか買うかという視点からこういう言葉が使われており、近年の求人事情を見ますとバブル期さながらの売り手市場、企業は人材確保に大苦戦しているようです。
時代に関わらず人を大切にしてきた企業は、今もそれほど人材に苦労していない又はすぐ充足するのに対し、人を使い捨てのごとく使ってきたいわゆるブラック企業は、長い期間にわたって人材の確保に苦労されているという話をよく聞きます。そういった企業の都合だけを優先したようなブラック企業も時代の流れには逆らえず、今では従業員に対する向き合い方そのものを変えざるを得なくなってきました。会社と人との関わりも時代によって変わっていきますが、変わってはいけないものもあると思います。買い手市場であっても企業は従業員に感謝と敬意を持つべきだろうし、売り手市場であっても従業員は企業に誠実に応えることが必要ではないでしょうか。
さて、弊社は今、WEB求人サイト大手「ディップ株式会社(バイトル)」と業務提携をしています。四国以外の求人事情や、いわゆる売り手市場における求職者の動向などもリアルタイムで共有されるため、弊社スタッフはそうした情報を元に効果的な人材確保の提案を行いやすくなっています。バイトルは今やWEB求人業界で確固たる地位を占めておりますし、キャリアザウルスは地元の愛媛・高知両県で20年以上の発刊実績があります。弊社営業スタッフはWEB媒体と紙媒体、それぞれの強みを生かしたご提案が可能です。そして若い世代のスマホ普及率が90%を超えていることから、最近ではWEBを軸としたプレゼンテーションを行うことが多くなりました。
しかしその反面、企業の人事ご担当者様の意見として、ネットからの応募は面接日に求職者が現れないとか、連絡しても電話に出ず折り返しもないといったお話しも少なからず伺います。責任感のないブラック求職者に迷惑を被っている企業様は少なくありませんが、それでも企業はこうした流れに対応しなければ人材確保は難しく、なかなか悩ましいところでありましょう。
そんな中でとても考えさせられた面白い出来事がありました。とある大手工場の人事ご担当者様(仮にK様とします)と打ち合わせしたときのことです。私としては新しい情報を元にご提案しているのですが、その方はそうした時代の流れと完全に逆行した、しかし誰が聞いても納得の「ド正論」を堂々と展開していくのでした。
私:「バイトルにはWEB応募機能があります。求職者が手軽に応募できる便利な機能ですので、そちらを設定してみませんか?」
K様:「いや、当社の今までの実績をみると、ネットよりも電話の応募から良い人材が来ているという経緯がある。当社は電話応募だけで十分だ」
(注:こちら様とはそうなりましたが、WEB応募はぜひ設定してくださいね!)
私:「そ、そうですか…。でも応募数は少しでも多い方がいいですし、求職者の窓口を増やす意味でもぜひWEB応募を設定しましょうよ!(求人担当としては一件でもいいから応募があったと言われたいんです)」
K様:「確かにそうかもしれないね。しかしもし本当に働きたいというなら、まずはそのことを自分の口でしっかり伝えるのが社会人として当たり前の礼儀だとは思わないか?」
私:「(それは私も分かっているんですが…)そ、それもそうですね。でもまずは応募がなければ話のしようもありません。応募があってこそ話も前に進むのではないですか?」
K様:「いや、中途半端な気持ちの方はどちらにしても断ることになる。うちはモノづくり系の会社だから品質が何より大切、人こそ宝なのだ。技術が身につくには時間がかかるから、ある程度の期間は真面目に勤めてもらわなければいけない。だからこそ頑張ってくれる人が長く勤められるよう、しっかりした待遇を用意してある。求職者に媚びるでなく、偉そうにするでもない。会社と従業員は対等であるべきと私は思う」
私:「(くっ!せめて一太刀)確かにそうですね。では職場環境として人間関係が良いとか、明るい職場であることをPRしてみませんか?」
K様:「いや、うちは当たり前の挨拶さえできれば十分だ。責任感を持って仕事していればおのずと相手の人間性は分かるものだし、やることをきちんとやっていれば良好な人間関係が生まれるはず。そもそも人間関係が悪くなるのは愛想が良いとか悪いではなく、人のことを考えず雑な仕事をしたり、時間とか約束を守らなかったりといった中途半端な仕事をして、周囲に迷惑をかけるから起こるのではないか?」
私:「(ぐふっ!久々にええ話、聞かせてもろたでぇ)K様。いちいち一つ一つ何も間違ってないです。返す言葉もありません」
何でもOKみたいな感じにしなければなかなか人が来てくれない売り手市場では、企業が募集のハードルを下げざるを得ない状況が起こっているのも事実です。そんな中でK様は、当たり前のことを当たり前に言ってくれましたし、私も正直言うと同じように思っていました。「面接日時に面接に行く」という約束すら守れない人が、入社後まともな仕事が出来るかどうかは甚だ疑問です。時代に迎合して求職者におもねるような提案をしている自分が恥ずかしくなってきました。
K様:「確かに私の言っていることは時代遅れかもしれない。しかし当社はスタッフを本当に大切に育てていくつもりだ。当社に力を貸してもらえないだろうか?」
私:「(何か知らんが燃えてきたでぇ!)分かりました。K様は何一つ間違っていません。ご反応が見込めるか分かりませんが、今までお聞きした内容を元にしっかりした原稿を作成させていただきます!」
こうしてザウルスとバイトルの原稿は、完全に時代から逆行したコッテコテの内容となりました。正直不安もあったのですが、なんと!その週から今まで空振りだった応募状況が変わり、少しずつ応募者が来てくれるようになったのです。そしてそれは今も順調に続いています。私はその時、時代の流れも確かに大切ですが、人事担当者の想いをしっかりお伝えすることがとても重要だと感じました。もちろんこのようなやり方が全ての企業様に当てはまるわけではありませんが、このK様は確固たる信念を持って人材確保に取り組まれているからこそ、こうした素晴らしい結果が出たのだと思います。
売り手市場…。
求職者の立場が強く、企業の立場が弱い時代です。しかしこんな時代だからこそ、企業は確固たる信念を持って人材を確保してほしいし、求職者にも人間性や誠実さが求められます。特に求職者の皆様に申し上げたいのは、面接は企業との約束ですから、企業側もその時間を割いているということです。ブラック企業が求職者から見放されるように、ブラック求職者も企業から見放され、いずれはどこからも採用されなくなります。中央都市のコンビニやファストフード店では、既に日本人を見かけることが少なくなっているのはご存知かと思います。日本は移民に反対のようで、その実態は既に移民状態です。約束を守らない中途半端な日本人より、真面目に働くアジア系外国人の方が重宝される時代が来ており、その現象はいずれ地方都市である愛媛県や高知県にも訪れることでしょう。
求職者の皆様、面接に行けない場合はきちんと断りの連絡をしましょう。そして自分を磨き、企業があなたを喉から手が出るほど欲しい人材だと思えるよう、自分自身を成長させてください。
企業の皆様、今は厳しいかもしれませんが、きっと素晴らしい人材が来てくれます。諦めず、しっかりした想いをもって頑張りましょう。
(文/近衛兵)